新作アニメ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』が、日本国内で最後に残っていた邦画実写作品をランキングから押し出した。
『鬼滅の刃 無限城編』がこれほどの大ヒットになるとは、予想できなかった人もいるだろう。確かに、2020年公開の『無限列車編』は、日本の歴代興行収入1位を記録した作品だが、その成功は社会現象的なブームに後押しされた部分が大きく、当時はパンデミックの真っ只中で他作品との競合も少なかった。
また、『無限列車編』の公開時にはすでに原作マンガは完結しており、それから5年以上が経過し、シリーズの熱も一段落したかに見えた。
しかし、7月18日に日本で劇場公開された『無限城編』は、驚異的な興行成績を記録している。日本歴代の「初日興行収入」「単日興収」記録を更新し、わずか8日間で興収100億円(約6757万ドル)を突破。さらに、公開からわずか17日で累計興収は176.4億円に達し、ついに日本歴代興収トップ10入りを果たした。
これにより、2003年公開の実写映画『踊る大捜査線2 THE MOVIE』が11位に後退。『無限城編』のトップ10入りにより、日本の興行収入ランキング上位10作品には、邦画実写作品が一つも残らない状況となった。
現在、トップ10はすべてアニメ作品か、もしくは海外映画で占められている。Coherent Market Insights によれば、VFXおよびアニメーション業界は、2025年から2032年にかけて年平均成長率9.9%で拡大し、2025年の市場規模2001.8億ドルが、2032年には3878.6億ドルにまで成長すると予測されている。ゲーム、エンターテインメント、広告などの分野における高品質なアニメ・VFXコンテンツの需要が増しているのがその背景だ。
また、ランキングを見ると『無限列車編』が未だ1位を維持しており、これにより『鬼滅の刃』シリーズはトップ10のうち2作品(全体の1/5)を占める。さらにスタジオジブリ作品が30%、ワンピースシリーズと新海誠監督作品がそれぞれ1作ずつ、そしてディズニー映画が1作、残る2作は『タイタニック』と『ハリー・ポッターと賢者の石』という海外作品だ。
日本国内の歴代興行収入トップ10(2025年8月現在)
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』:407.5億円
『千と千尋の神隠し』:316.8億円
『タイタニック』:277.7億円
『アナと雪の女王』:255.0億円
『君の名は。』:251.7億円
『ONE PIECE FILM RED』:203.4億円
『ハリー・ポッターと賢者の石』:203.0億円
『もののけ姫』:197.0億円
『ハウルの動く城』:196.0億円
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』:176.4億円
邦画実写作品はトップ10だけでなく、トップ50でもわずか3本のみ。『踊る大捜査線2』(11位)、1983年の『南極物語』(38位)、そして1998年の『踊る大捜査線 THE MOVIE』(47位)である。海外作品を除いた日本作品の中でも、トップ7はすべてアニメ、トップ19のうち17作品がアニメであり、実写は大きく後れを取っている。
邦画実写作品が上位から消えたことは、視聴者が実写映画に興味を失ったというよりも、国内市場および社会的背景が大作実写映画の制作を困難にしていることを示している。
日本の観客は昔から洋画にもオープンであり、ハリウッドのような莫大な制作予算とVFX技術がなければ、壮大なファンタジーやSFの世界を実写で表現するのは困難だ。その結果、日本ではブロックバスター規模の映画を実写で制作するより、アニメという表現形式に頼る傾向が強まっている。
また、日本の社会は比較的平和で犯罪率も低いため、アクションやサスペンスに向いた「事件性の高い」物語が生まれにくく、日常を描いた地味な人間ドラマが主流となり、結果的に大規模な観客動員にはつながりにくい。事実、トップ10作品のうち9本がファンタジー映画で、『タイタニック』だけが現実世界を描いた作品だ。
一方、米国やカナダの映画興行収入トップ10は、マーベル映画4作、アバターシリーズ2作、『スター・ウォーズ』『ジュラシック・パーク』『トップガン マーヴェリック』、そして『タイタニック』が並び、SF/アクションが主流となっている。
『無限城編』が『無限列車編』を超えるかどうかはまだ分からないが、チケットの売れ行きは前作以上のペースで、座席確保型プロモーション(席ジャックキャンペーン)も後押ししているため、日本映画史上最大のヒット作品となる可能性も十分あるだろう。

