人生の大半を、「医療科学の進歩」と「抜けていく髪」との競争に費やしてきた筆者にとって、数年に一度訪れる“ブレイクスルー”のニュースには毎回心が揺れる。とはいえ、これまでのどれもが「画期的」と言うには少し足りず、ブルース・ウィリスのフィルモグラフィーに例えるなら、すでに『アルマゲドン』あたりまで来ている。次が最後かもしれない。
そんな中、日本のロート製薬が発表した最新の研究成果は、まさに「最後の希望」かもしれない。同社によれば、**キハダ(黄柏)と陳皮(乾燥させたミカンの皮)**から抽出した成分が、ヒト毛乳頭細胞内の胎盤成長因子(PlGF)を2倍に増加させることが確認されたという。
PlGFは、髪の成長を促す上で重要なタンパク質で、毛髪の伸びを早くし、成長期を長く保つ効果がある。このアプローチは、従来のホルモンや血管、頭皮といった“外側”をターゲットにしたものとは異なり、細胞レベルでの刺激に着目した新しい方法だ。PlGFは体内で自然に生成されるため、男女を問わず使用できる可能性があり、まつ毛の育毛にも応用できるとされている。
市場調査会社Coherent Market Insightsによると、植物抽出物市場は2025年から2032年にかけて年平均成長率(CAGR)11.4%で拡大する見通しで、2025年には市場規模が473.9億ドル、2032年には1,009.7億ドルに達すると予測されている。医薬品、機能性食品・飲料、化粧品といった業界での天然成分の需要増加が、成長を後押ししている。
しかし、ネット上のコメントを見ると、期待と疑念が入り混じった複雑な反応が広がっている。
「もうその時が来たか…」
「また髪の話かよ」
「ハゲに希望はあるのか?」
「またやるの?きな粉に、昆布に…終わらないな」
「私にはもう遅い…これは人類と科学の勝利だ」
「髪がある人に使ったらどうなるんだろう?」
「嘘だ!また騙されるもんか!」
「急いでくれ!50代までは順調だったけど、甲状腺を取った途端に全部抜けたんだ」
ロート製薬によると、今回の発表は研究開発フェーズの終了を示すものであり、今後はこの植物成分を活用した育毛製品の開発に取り組んでいくとのこと。
ただし、SNS上でも言及されているように、PlGFが髪の成長を促すことは確かでも、すでに眠っている毛包を“目覚めさせる”保証はない。つまり、将来のロート製品は、「ダイ・ハード3」あたりで踏みとどまっている人たちにとっての予防的な救世主になり得ても、「ダイ・ハード/ラスト・デイ」以降に突入している人々にとっての逆転の一手とは限らないのだ。

