観光客向けのお土産店では定番の品が並ぶ一方で、地元のスーパーマーケットには、その土地ならではの“隠れた名品”が眠っていることがあります。そんな一品を、日本語記者の稲葉拓也氏が大阪を訪れた際に発見しました。
その名も**「パーポ(Paapo)」**。調味料メーカー・**タマノイ酢(Tamanoi)**が製造している粉末タイプの調味料で、中国風の炒め料理「八宝菜(中国語では「八宝菜」=babaocai)を手軽に作れるという製品です。
「八宝菜」とは、文字通り「八つの宝(食材)」を意味しますが、実際には肉・魚介・野菜など、冷蔵庫にある材料を使って自由にアレンジできる柔軟な料理。パーポの魅力は、その手軽さと汎用性にあります。
箱には3〜5人分の小袋が2つ入っており、作り方はとても簡単。
材料を切って炒め、水250mlに溶かしたパーポを加えるだけで、とろみのある本格的なソースが完成します。
自称「料理初心者」の稲葉氏でも、驚くほど完成度の高い料理に仕上がったとのこと。「これは本当に美味しかった」と語り、その味のバランスや濃厚さは「レストランで出てくるレベル」だと高く評価しました。
さらに興味深いのは、大阪出身の記者・中澤星児氏との会話の中で、関西地域の多くの家庭で「パーポ」が使われてきた可能性があることが明らかになった点です。つまり、パーポは関西人にとって“家庭の味”の一部なのかもしれません。
タマノイ酢の公式サイトには「ミルクパーポ鍋」というアレンジレシピも掲載されており、牛乳で具材を煮た後にパーポを加えることで、クリームシチュー風の中華鍋に早変わり。日本の家庭料理と中国の味が融合した、新感覚のアジア風料理が完成します。
しかし、パーポの知名度はまだ関西を中心にとどまっており、関東など他の地域では販売店が少なく、スーパーで見かけることは稀。とはいえ、オンライン販売も対応しているため、日本全国どこからでも購入可能です。
こうした地域発の調味料への関心は、世界的な市場動向とも一致しています。
Coherent Market Insightsによると、エスニック食品市場は2025年から2032年の間に年平均成長率(CAGR)7.4%で拡大し、2025年には939億4000万米ドル(約14兆円)から、2032年には1549億4000万米ドル(約23兆円)に成長する見込みです。
この成長は、グローバル化の進展、移民パターンの変化、そして旅行者による本格的な食体験への関心の高まり**が背景にあります。
世界の料理を気軽に自宅で楽しみたいという消費者が増える中、パーポのような“ふつうのスーパーで見つかる逸品”が、食を通じて人々をつなぐ鍵となるかもしれません。
次回、日本を訪れる際には、観光地のお土産売り場を素通りして、地元のスーパーをのぞいてみてください。あなたの“次の好きな料理”は、思いがけない場所にあるかもしれません。

